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外国人による自営業

 

 近年のリストラの増加あるいはベンチャーブームの影響からか、日本人の方からも脱サラして自営業をはじめたい、と言う相談を良く受けます。外国人の方も例外ではなく、脱サラして自分の会社を作りたい、あるいは留学生が学校を卒業後、企業に就職するのではなく、自ら事業を興すというケースが増えています。しかしながら、外国人がこの日本で自営業を始めるには、どうしてもビザの問題が生じ、厳しい条件をクリアする必要があります。日本人のように、最低限の資本金だけを準備して「はい!会社設立完了。明日から事業開始」というわけには行かないのです。最悪、会社はできたけれどビザが取れないために営業できない、というケースも発生します。(当事務所でも実際にこのような相談を受けたこともあります。)
 外国人が自営業をはじめるには、通常「投資・経営」という在留資格が必要です。以下に、その「投資・経営」に必要な条件及び書類などを説明します。ただし、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格を持っている方は、日本での活動内容に制限がありませんので、会社を作るのもお店を開くのも自由です。もちろん、以下に示すような「投資経営」資格取得に必要な、厳しい条件をクリアする必要もありません。

投資・経営に該当する方

 外国人が自営業をはじめるには、「投資・経営」という在留資格が必要です。この「投資・経営」に該当するのは、以下のような方です。
1. 本邦で事業の経営を開始してその事業を経営する者
2. 1に該当する外国人が経営する事業の管理に従事する者
3. 本邦の事業に投資してその事業を経営する者
4. 3に該当する外国人が経営する事業の管理に従事する者
5. 本邦で事業の経営を開始した外国人に代わってその事業を経営する者
6. 5に該当する外国人が経営する事業又は本邦で事業の経営を開始した外国人に代わって日本人が経営する事業の管理に従事する者
7. 本邦の事業に投資している外国人に代わってその事業を経営する者
8. 7に該当する外国人が経営する事業又は本邦の事業に投資した外国人に代わって日本人が経営する事業の管理に従事する者

ここで言う「事業を経営する者」とは具体的には、会社の社長、取締役、監査役などで、「事業の管理に従事する者」とは会社の部長、工場長、支店長、などと考えられています。

投資・経営に必要な条件

1.事業を営むための独立した事業所が確保されていること。
 例えば、小規模の貿易会社であれば、小さな部屋に机一つ、パソコン、連絡用の電話・FAX等があれば、十分事業が行えます。このため、自宅の1室を事業所として使いたい、と言うケースがありますが、このような事業所形態では、「投資・経営」は認められません。

2.当該事業がその経営又は管理に従事する者以外に2人以上の常勤職員が従事して営まれる規模のものであること。
 この常勤職員は、日本人又は「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格を有する外国人でなければいけません。また「常勤」ですので、アルバイトやパートは不可です。また取締役などの役員は人数に含まれません。
 ただし、この規定では「2名以上の常勤職員で営まれる"規模"」とあるだけですので、仮に2名の常勤職員を雇用していない場合であっても、それに相当する事業規模であれば問題ないと解釈することができます。この点について、入国管理局からは「新規事業を開始しようとする場合の投資額が年間500万円以上」というガイドラインが出されています。

3.申請人が「事業の管理」に従事しようとする場合は、事業の経営又は管理について3年以上の経験を有し、かつ日本人と同等額以上の報酬を受けること。
  経営者としてではなく、管理者としての業務に従事する場合は、会社役員若しくは管理職としての実務経験が3年以上必要です。なお、この3年の経験には、大学院において経営又は管理に関する科目を専攻した期間が含まれます。

※その他、上陸審査基準としては挙げられていませんが、実際の審査では以下のような条件が要求されています。

4.その事業が適正に行われるものであって、かつ継続・安定性が認められること。
  この要件は、「投資・経営」取得のための審査においてかなりのウェートを占めており、非常に重要なポイントです。既に長年事業を行っており、営業実績も豊富でその経営状況も安定している企業であれば、この条件をクリアするのは比較的容易です。証明資料も直近2,3年の決算書や納税証明等で済みます。
 しかしながら、新たに設立した会社について、その事業の継続安定性を証明することは、かなり困難です。何しろ、実績がないのですから、その根拠となる資料の出しようがありません。新規設立会社の場合は、事業計画書、資金計画書、等の資料によって事業の安定性を説明するしかありません。しかも、これらの資料は具体的な根拠に裏付けられた、しっかりした内容でなければいけません。入管が「なるほど、確かにこれならうまくいきそうだ」とうなずく位いの説得力が必要です。

5.各種社会保険が整備されていること。
  企業が各種社会保険を整備しなければならないことは、日本の法律で決められています。実状としては、社会保険のない中小・零細企業が多数ありますが、厳密に言えばこれは違法状態です。入管の立場としては、違法状態の会社の事業主にビザを与えることはできませんので、「投資・経営」取得のためには各種社会保険の整備は必須です。

6.出資金の出所について。
 「投資・経営」という名の通り、誰が投資したのか、そのお金はどこから持ってきたのか、はとても大事な要件です。特に「投資額500万円」のガイドラインが出されて以後、誰がいくら出しているのか、と言う点は非常に重要視されています。
 例えば、年齢も若く就労経験も少ない、まして会社経営の経験などは全くないという人物が、いきなり1千万もの現金を投資して事業を開始したというような場合、すんなり投資経営のビザはもらえるでしょうか?入管職員でなくても、「なんだかおかしい」と思いますよね。1千万もの現金がどこから出てきたのか、お年玉を貯金してきたにしては金額が大きすぎる、実は本当の出資者は別にいるのでは…、と怪しまれるのも当然です。
 このように、出資金の出所について疑われるおそれがある場合には、その辺をきちんと説明しておく必要があります。

※ なお、入国管理局からは、上述した「500万円の投資額」をはじめ、事業所の確保や事業の継続性について、より具体的で詳しい基準が発表されていますので、こちらを参照下さい。
http://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan20.html
http://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan43.html

投資・経営に必要な書類

 以下に、「投資・経営」の在留資格取得に必要な書類を説明します。(在留資格認定証明書交付申請の場合)

1. 在留資格認定証明書 交付申請書(用紙は入管にあります)
2. 外国人本人が準備する書類
    パスポート写し(身分事項欄、出入国スタンプのページ)
    写真(30mm×40mm) 2枚
    履歴書
    経営者・管理者としての活動に関する経歴及び資格を証明する文書
     ・学歴、職歴などの経歴を証明する文書
     ・所属機関からの在職証明書等で経営者・管理者として従事した期間を証明する文書
    申請人の出資金額を証明する文書
     ・送金証明書
     ・持ち分取得に関する議事録等

3. 受入機関(会社)が準備する書類
(1) 事業内容を明らかにする資料
    会社登記事項証明書(登記簿謄本)
    会社案内やパンフレット
    直近の損益計算書の写し、四季報等
    事業計画書・資金計画書
(2) 常勤の職員総数を明らかにする資料
    各種社会保険に関する書類で常勤職員数が分かるもの
    賃金台帳、源泉徴収簿等の写し
    職員の住民票又は外国人登録証明書の写し
(3) 事業所の概要を明らかにする資料
    事業所の賃貸契約書の写し
    事業所写真
(4) 活動の内容、期間、地位及び報酬を証する文書
    契約書、派遣書の写し
    異動通知書の写し

注1)これらの書類全てが必要というわけではありません。自ら投資して経営者となる場合や、自らは投資せず管理者となる場合などによって、必要な書類は違ってきます。
注2)上記の書類はあくまで一般的なものですので、これ以外でも「投資経営」に必要な条件に適合していることを示す資料については、申請人側から積極的に提出するのがよいでしょう。

投資・経営に関する考察

(1)一体どれくらいの事業規模が必要なのか?
 現在は、入国管理局から「新規事業を開始しようとする場合の投資額が年間500万円以上」というガイドラインが出されていますが、以前はよく「一体どれくらいの規模の事業なら投資経営ビザが取れるのか?」と言う質問を受けたものです。この点について、単に「500万円」というだけでなく、もう少し具体的に考察してみたいと思います。
 まず、独立した事業所を借りるには、敷金として100〜200万円は必要でしょう。それに毎月家賃が10〜20万円(年間120〜240万円)かかります。開業当初に必要な備品類(机や椅子、電話、パソコン…)に100万円。2名の従業員の給料が社会保険等も含めると、最低でも1人年間300万円は必要。2名で600万円。これだけでも合計して1000万円前後はかかってしまいます。その上、事業を始めれば、交通費・通信費・広告費…と様々な費用が発生します。
 事業を開始してから、数ヶ月もすれば売上が上がるとはいうものの、やはり開業資金としては1000万円程度は必要ではないでしょうか。とすると、従来の有限会社(資本金300万円)程度では、やや役不足と言わざるを得ません。資本金1000万円の株式会社としての規模が必要なのではないでしょうか。
 もちろん、1000万円全てを申請者本人が1人で用意する必要はないと思いますが、せめてその半分の500万円を用意して資本金として出資する必要があるように思います。このような点からも、「500万円の投資額」という入管のガイドラインはかなり的を射たものといえるのではないでしょうか。

(2)留学生が卒業後、会社を設立して事業を開始できるか?
  昨今の就職事情の悪化は、日本人学生以上に留学生の身にも降りかかっています。このため、企業に就職するのではなく、自らが会社を設立して事業を開始したいという留学生が増えています。
 しかしながら、上述したような厳しい条件は、このような留学生にも適用されます。まず第1の障害になるのは、事業規模です。小さな商店や小規模の会社なら何とか手が届きますが、1000万円規模の株式会社となると、学校卒業直後の留学生にとってはかなり高いハードルとなります。
 次に障害になるのは、資金の出所です。仮に投資経営に必要な事業規模を実現するのに十分な資金が準備できるとして、そのお金が一体どこからでたのか、という点が問題となります。例えば、留学中にアルバイトをして貯めたお金だとすると、「留学ビザは就労ビザではなく、働くことはできない。資格外活動許可によりアルバイトをすることは認めているが、これはあくまで学費や生活費の足しにするため。貯金して事業資金とするなんて認められない。」と言われます。次に、本国の両親などに出してもらった場合。この場合、出資者はあくまで「両親」であって、留学生本人ではありません。本人が出資者でない以上、その人の経営能力が問われることになりますが、本国でも日本でも学校しか行っておらず、職業経験がないとなると、その経営能力を証明するのは難しいのではないでしょうか。
 例えば、日本に留学に来る前に本国で数年間働いていた、と言う場合はその間にお金を貯めていても不思議ではありません。これがもし自営業であれば、経営能力も備わっているでしょう。しかしながら、今まで全く働いたことのない留学生の場合、資金の出所及び経営能力の面から投資経営ビザの取得はかなり厳しいものになると考えられます。



   

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