(1)入管法で定められた条件
入管法第22条第2項では、
(1) 素行が善良であること
(2) 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
(3) 法務大臣がその者の永住が日本国の利益に合すると認めること
と規定されています。
なお、申請人が日本人、永住者、特別永住者の配偶者又は子である場合は、(1)(2)の要件は免除されます。
(2)実務上の審査条件
(1) 引き続き10年以上本邦に在留していること
ここでいう「引き続き」とは、たとえ一旦海外へ出国した場合でも、再入国許可を取って一時的に日本を出た場合は除かれます。すなわち、在留資格が切れることなく、変更・更新して10年以上日本に住んでいることが必要となります。
なお、留学生として入国し、学業終了後就職している方については、就労可能な在留資格に変更してから5年以上の在留歴を有していることが必要です。(日本語学校や大学等での在学年数が7年、就労年数が3年で合計10年という場合は申請できません。)
また、日本人、永住者、特別永住者の配偶者につきましては、婚姻後3年以上本邦に在留していれば足ります。ただし、当然ながら、婚姻の実体が伴っており、婚姻生活の破綻や別居等がなく、正常な婚姻生活が継続していなければいけません。
さらに、日本人、永住者、特別永住者の実子又は特別養子につきましては、引き続き1年以上本邦に在留していれば足ります。
(2) 現に有する在留資格について最長の在留期間を与えられていること
最近は、ほとんどの在留資格で最長の在留期間が3年になっています。例えば一般的な就労資格である「人文知識・国際業務」では在留期間が1年と3年の2種類ありますが、永住申請には"3年"の在留期間が与えられていることが必要です。
(3) 素行条件
この条件につきましては、上の「入管法で定められた条件」の中に上げられていますが、ここではその具体的な内容について説明します。「素行が善良」と言う言葉は漠然としていますが、要するに一般良識的に見て善良な市民である、ということです。具体的に以下のようなケースは問題となることがありますので、注意が必要です。
a) 刑事事件を犯した場合。有罪判決を受けて刑の執行中、或いは執行猶予中の場合は永住の許可はまず下りません。また、過去の犯罪歴につきましても、その内容によって何年かは永住申請は難しいでしょう。交通違反につきましても、悪質なもの(ひき逃げや飲酒運転など)については問題となります。一方、駐車違反や一旦停止違反など、1〜2点の軽微な違反については永住申請にはあまり影響はありません。(もちろん違反はない方がよいのですが)
b) 納税義務を果たしていない場合。会社員の場合は源泉徴収によって自動的に税金が天引きされていますので、ほぼ問題はありませんが、自分で商売をしている場合には、確定申告をしていない、あるいは以前に重加算税の追徴を受けたことがある等は問題です。また、ばれていなくても過少申告をしていると、永住申請の審査中に指摘を受けることもあります。
また、最近では所得金額と扶養家族との関係から所得税や住民税が非課税となっている方については注意が必要です。この方達は、悪意でもって脱税をしているわけではなく、正規の日本の課税制度に基づいて「非課税」となっているだけですので、従前は永住が許可されていました。しかしながらここ数年、正規に税務申告をしているにもかかわらず、所得金額と扶養家族との関係から「非課税」となっている場合に、永住不許可となるケースが見られます。不許可理由は「日本国の利益に合するとは認められない」ということです。
必ずしも、「非課税で納税額ゼロ」=「永住不許可」と言うわけではなく、その他の条件も加味して総合的に判断されているようですが、「非課税」の方は十分に注意して下さい。
c) やや、b)にも関連しますが、許認可が必要な業種(飲食店や建設業、産廃業など)を商売としている場合に、無許可で営業をしていると問題となります。
d) その他、永住申請を希望している方、もしくは既に申請をして審査中の方は、どんな軽微な違反であっても細心の注意を払う必要があります。お酒を飲んで盛り場でケンカをしたりしないように。たとえ相手からふっかけられた場合であっても、ここはグッとがまんでお願いします。
(4) 生計条件
この条件につきましては、上の「入管法で定められた条件」の中に上げられていますが、ここではその具体的な内容について説明します。自分自身、もしくは生計を同じくしている配偶者やその他の親族が、今後安定して生活を維持しているだけの収入や資産があるかどうかがチェックされます。
この条件についてよく「いくら位貯金があれば永住申請できますか?」と言う相談を受けることがあります。現在、永住の条件に「○○円以上預貯金があること」というようなものはありません。まして、お金持ちしか永住が許可されないと言うことは全くありませんので、そのような心配は無用です。ただし、(3)で述べた所得金額と扶養家族との関係から「非課税」となっている方は注意が必要です。
(5) その他
帰化申請では、日本語能力(読み書き・会話両方)が必要とされていますが、永住申請につきましてはさほど日本語能力は要求されていません。(もちろん、日本語ができる方が日本への定着性が認められやすいでしょうが)
(1) 永住許可申請書 ※
(2) 素行が善良であることを証明する資料
公課の履行状況を明らかにする書類
(所得税、固定資産税、住民税、事業税等の納税証明書)
表彰状、感謝状、叙勲書等の写し
経歴(履歴)書 ※
(3) 独立生計能力を証明する資料
資産又は技能を明らかにする資料
(預貯金通帳の写し、不動産登記簿謄本、証券等)
職業を明らかにする資料
(在職証明書、会社登記簿謄本、確定申告書控え写し等)
収入(所得)を明らかにする資料
(所得証明書、源泉徴収票、確定申告書控え写し等)
(4) 身元保証に関する資料
身元保証書 ※
身元保証人の職業に関する資料
身元保証人の所得に関する資料
身元保証人の住民票or外国人登録原票記載事項証明書
(5) 身分関係を証明する資料(日配、永配等の場合)
戸籍謄本、出生証明書、健康保険証写し等
親族一覧表 ※
世帯全員の外国人登録原票記載事項証明書or住民票
(6) その他
永住を希望する理由についての陳述書 ※
注1)※は入国管理局から配布された用紙に、本人が記入する書類です。
注2)これらの書類全てが必要というわけではありません。逆に、申請内容によっては上記以外の別の書類を追加で求められる場合もあります。